高校野球から学ぶスポーツマンシップ

2019-09-04

私は毎年、この時期になると胸を熱くさせられるものがあります。それは、高校野球です。
先日、101回目の全国高校野球選手権大会の全試合が終わり、大阪の履正社高校が見事初優勝を成し遂げましたね。今年も記憶に残る名試合が多く、私もテレビで観ながら選手達と共に闘ってる気持ちで、何度も喜び、叫び、悔やみ、涙を流し、そして最後はありがとう、という想いで満たされました。

高校野球に限らず、何かに一生懸命全力で取り組む姿というのは周りの人や見ている人、もちろん取り組んでいる自分自身の心にも何かしら影響を与えてくれ、そして感動を生むものです。
そんな素敵な感動をくれた高校球児達から私達が学ぶべきスポーツマンシップについて、今回はお話したいと思います。

スポーツマンシップとは

まずはスポーツマンシップの定義についておさらいしてみましょう。Wikipediaにはこうあります。

“スポーツマンシップは、スポーツのルールを遵守してゲーム(競技)を行っていくうえでの根本的な姿勢をいうものである。スポーツマンシップとは、スポーツをすること自体を楽しみとし、公正なプレーを尊重し、相手の選手に対する尊敬や賞賛、同じスポーツを競技する仲間としての意識をもって行われる活動であるという姿勢となって表される。”

スポーツマンシップというものが確立され、これほどにまで世に広まっていることが、まず凄いことだなと私は感じました。今では選手宣誓でも『スポーツマンシップにのっとり正々堂々と戦うことを誓います』という文言が当たり前のように使われているほどです。

ですがきっと皆さんの心の中にあるスポーツマンシップという考え方はおそらく曖昧であり、具体的ではなく、なんとなくそれらしきもの、という感覚ではないでしょうか。でもそれでいいのです。その曖昧な感覚は、それぞれの人が自分なりの解釈を持ち、気づかないうちに自然と自分の心の中に根付いているものだからです。
実際、スポーツマンシップにのっとらなくてはいけない、という気持ちで行動している人はむしろ少ない気がします。ですが自然と行動や言葉に表れる、それこそが我々が求められているスポーツマンシップ、そしてスポーツマンのあるべき姿なんだと思います。

高校野球でスポーツマンシップを考える

それでは、具体的な話をしましょう。

“仲間意識”そして”互いを認め合う”

2018年の全国高校野球選手権大会では、猛暑の影響もあり、例年以上に試合中に足を攣る選手が続出しました。そんな中、なんとチームメイトより先に、相手チームの選手が飲み物やコールドスプレーを持って駆け寄ってきてくれたということがいくつかの試合中にありました。また、捕手がファールボールを追う際に脱ぎ捨てていったマスクを、相手チームの選手がユニフォームで拭いて渡してあげた、というようなこともあったそうです。
甲子園という最高の大舞台。負けたら終わり。どのチームも勝ちにこだわって試合に臨んでいると思います。そんな状況下でも対戦相手がピンチの時に自ら手を差し伸べ、声を掛け、助けることが即座にできる、本当に素晴らしいですよね。もちろん、皆がしているわけではありませんし、することが正しい、しないことが悪い、という話ではありません。

飲み物を渡しに行った選手の1人は、「自分は近くにいたので倒れた瞬間に助けようと思った。敵だとしても助け合うことは必要。」と後に話していました。勝負の世界でありながらも、相手のことを思いやる気持ちを欠かすことなく、そしてそれが当然のことだと。もしかすると彼らは敵も味方も関係なく、もはや同じ舞台で戦う“仲間”のように感じていたのかもしれません。

そして今年の同大会、記憶に残るのは智弁和歌山対星稜の3回戦での試合でした。星稜が延長14回タイブレークの死闘を制し、劇的なサヨナラ勝ち。特に星稜のエースピッチャーである奥川選手の、165球の熱投、3安打1失点23奪三振という成績と、疲労が限界に近い中最後まで1人で投げ抜いた根性には驚かされましたね。
奥川投手は延長11回途中、右ふくらはぎが攣ってしまいました。12回に入る前に治療を行ったのですが、その際、智弁和歌山の主将である黒川選手から熱中症に効く錠剤が届けられたそうです。
その効果もあってか奥川選手の脚もそれ以降攣ることなく、14回まで投げきることができました。
試合後も黒川選手は、「奥川君はこれまでの人生で一番素晴らしい投手だった。」称賛し、さらに、「必ず日本一をとってくれ」と彼なりの想いが詰まった激励の言葉をかけていました。両選手はU-18日本代表候補のチームメイトでもあるのですが、苦しい試合を戦い合い、そのがさらに深まったことは言うまでもないでしょう。

“必笑”がもたらすもの

さらに、その試合では奥川選手の人柄というものが至る所に表れていました。
まずはなんといっても試合中のあの笑顔です。緊張した場面で一番プレッシャーがかかっているはずなのに、見ている我々にまで安心感を与えてくれる、元気をくれる、そんな笑顔でした。笑顔がでるのは、単純に楽しいからや良いプレーが出ると嬉しいから、という理由もありますが、それだけではないのです。奥川選手はその理由を「自分が笑顔でいれば、仲間が安心できるし、お客さんやその他の人を味方にできる」と語っています。
チームの士気を高める為であったり、周り全体の雰囲気を変え流れを良い方向に導く為でもあったのですね。実際、笑顔というのは連鎖するもので、奥川選手が笑顔になるとチームメイトも笑顔になるというシーンがよく見られました。守備のタイムの際にも、奥川選手は真面目なことよりもチームメイトの緊張をほぐし和ませるような言葉を敢えてかけているようです。
“全員野球”という言葉にもあるように、自分1人だけではなく全員で戦っているという意識と、全員の心を1つにという想いの表れなのだと思います。
また星稜の主将で捕手の山瀬選手は、普段の練習では非常にストイックで真面目な方なのですが、甲子園は笑顔で楽しもう!と決めていたそうです。きっとそれだけ厳しい練習をこなし、やれるべきことを後悔ないようしっかりやってきたということかもしれませんね。主将として周りも良く見ていましたし、奥川選手や仲間全員を信頼して優しく包み込むような笑顔がとても印象的でした。

星稜の選手達は、モットーである“必笑”を貫き、苦しい状況であればあるほど、笑顔の効果は絶大なのだということを感じさせてくれました。笑顔になれば自分自身もリラックスできて力みがなくなって普段通りのプレーができるとも言いますし、自分にも周りにも本当に良い事づくしですよね!

そして智弁和歌山との試合でもう1つ私が素晴らしいと思った奥川選手の行動がありました。それは試合後のことです。
校歌を歌い終え、退場する為に皆が走り出している中で奥川選手ただ一人少しだけ残り、智弁和歌山の選手達や審判の方々、智弁和歌山の観客席の方々にむかって一礼していたのです。どういう意図であったかは想像することしかできないのですが、苦しい試合だったからこそ、本当に意味のある大きな勝利に携わってくれた全ての人に感謝の気持ちを伝えたかったのではないか、と私は思います。

奥川選手に限らず高校球児の皆さんは、試合中はもちろん試合以外の時でも本当に礼儀正しい選手が多いです。そして、レギュラーメンバー、ベンチメンバー、マネージャー、監督、コーチ、アルプスから声援を送る野球部員、家族を含む地元の方々の応援団、全員が全力一生懸命で、キラキラしていて、見ていて眩しいくらいです。だからこそ多くの国民が高校野球の魅力にこれほどまでに惹きつけられるのでしょう。

このように、高校野球を観ていると、スポーツマンシップという言葉が当てはまる行動や言動、エピソードが数えきれないくらい見受けられました。

バドミントンにおけるスポーツマンシップ

それではバドミントンではどうでしょうか。

ロンドン五輪で起きたまさかの失格行為

バドミントンにおいてスポーツマンシップと聞いて思い出すのが、やはり2012年ロンドン五輪での『無気力試合』でしょうか。女子ダブルスの1次リーグで、韓国、中国、インドネシアの計4ペアが準々決勝以降の有利な組み合わせを考え故意に負けようとして失格になったというものです。
その4ペアにとってはその方法もある意味で上位を目指す為に必死で、全力で考えた結果かもしれません。
確かに、そのような行為につながってしまうトーナメントの方式に問題がないとも言い切れないでしょう。
ですが無気力試合をされた相手や応援してくださっている方々の気持ちまで考えた上での行為であるとは考え難いですよね。
国を背負ってきている大事な舞台だからこそ、勝ち負けだけではなくその選手のスポーツマンシップが問われる場であることをもっと自覚すべきなのかもしれません。世界で称賛されるトッププレイヤーがただ強いだけではなく、観ていて感動をくれる人間性が素晴らしい、そんな方が多いのも頷けます。

苦悩を乗り越えた先にあったもの

もちろんバドミントンをしている方達でもスポーツマンシップを大切にしている方はたくさんいます。
有名な話で言えば2016年アジア選手権での女子ダブルス決勝戦。日本勢史上初の金メダルをかけて高橋・松友組と福万・與猶組の対戦になりました。勝敗に関わらずリオ五輪出場権がある高橋・松友組。一方で福万・與猶組はここで優勝してポイントを獲得するしかリオ五輪への道はないという大切な一戦でしたが、結果は高橋・松友組が優勝。日本が二枠獲得できるチャンスであっても、高橋・松友組は全力で戦うことを選びました。
本人達は「きれいごとを言えばスポーツマンシップで戦った。でも私達は五輪の金メダルを目指しているので誰にも負けるわけにはいかない」と語っています。当時は周りからの批判的な声もあり、これで本当に良かったのかと悩んだこともあったかもしれません。ですが彼女らは全力で戦うということが自分達の為にも相手の為にも一番の誠意であると信じ、前だけを向いてさらに熱心に練習に励みました。

そして約3か月後、夢であったリオ五輪での金メダルを手にしました。福万・與猶組の思いも背負っての素晴らしい戦いぶりでした。きっと気持ちの面でもとても苦しかったと思いますが、スポーツマンシップを守り抜いたからこそ最高の結果に結びついたんだと私は思います。当時の彼女らの決断が正しかったかどうかは、現在のタカマツペアの人気ぶりをみれば、明らかですね。

また、以前記事にも書きました、女子シングルス日本代表の奥原選手のルーティーンの中にもスポーツマンシップが表れていましたね。詳しくはこちら

試合のマナーに関して

ここでスポーツマンシップに関連して、私達が規則以外で気を付けているいくつかのマナーについて改めて確認してみることにします。

  試合の前後に対戦相手ときちんと握手をして挨拶を交わす

コートに入るとき、出るときには、コートに向かって一礼をする

試合の前後に主審や線審に挨拶をする

シャトルを相手に返す時には丁寧にネットの上から返球する(下から打って相手のいる方にふわっと優しく返す)

シャトルをペアに渡すときには丁寧に手渡しをする

  主審や線審の判断には素直に従う

  主審や線審をする時にはよそ見せず真剣に取り組み、公平で迅速な判断をする

  相手の体に当ててしまった時、ネットインした時、フレームショットになった時、偶然でもわざとでも、一言謝罪する

当たり前のことのように感じるかもしれませんが、これらの行為は決して規則ではありません。よって、相手に強制するものでもありません。練習環境や年代、地域によっても様々だったりしますよね。

マナーに関して私の身近でスポーツマンシップに反する行為としては、

 〇 握手をする際、手の指が少し触れるくらいで済ませて挨拶も素っ気ない

 〇 あからさまに態度が悪く、シャトルを乱暴に返球する、またはシャトルを取りに行こうとしない

 〇 主審や線審の判断に納得がいかず暴言を吐く

 〇 相手を馬鹿にしたようなプレーや言葉を発する

 〇 ペアに腹を立てて空気を悪くする

などが挙げられます。おそらくバドミントンをしていれば誰しも一度は似たような行為を見たり経験したことがあるかと思います。これらはマナーを軽視しているからこそ起こりうることです。

皆さんは自分が普段気にしていなかった事でも、練習中や試合中、相手やペアのちょっとした気遣いが嬉しかったり、親切だな、好印象だな、と感じる事はありませんか?マナーを守れていない人もいれば、マナー以上の心遣いができる人もいるということです。

さいごに

高校野球やバドミントンを例に話をしましたが、スポーツは単なる運動とは異なり、自分一人だけで出来るものではありません。場所があって道具があって相手がいて審判等スタッフがいて、初めて成り立ちます。このことを忘れずに、常に周りへの感謝の気持ちや思いやりを持って、一生懸命に練習や試合に臨むようにしていきたいですね。
そして私達には技術向上の前に簡単にできる事がまだまだあるはずです。自分がされて嬉しかった事は今後積極的に真似をして、逆に自分がされて嫌な気持ちになった事はしないように気を付けて、自分も相手も楽しく気持ちよくプレーができるよう心掛けましょう。その心がスポーツマンシップを大切にすることに繋がっているのです。